81.面倒嫌いは森が好き --------------------



星野の放送後、城島は名簿とにらみ合いながら、ボールペンで何かを記入していた。

「とりあえず三浦さんと上原さんと岩瀬さんは『星印』だな・・・・。」
三浦・上原・岩瀬の名前の横に星のマークが記入される。
「松坂と岩隈、それに和田に木村さんあたりは『黒丸』と・・・。」
さらさらと名簿の上をペン先が動く。
「後は・・・そうだな清水さん、和田さん、それから相川、石井あたりも『白丸』にしとくか・・・・」
55の右隣に丸を記入したところでペンが止まった。
それと同時に城島の呟きも止まった。


城島は支給された双眼鏡を使い、島上陸後の各選手の行動を見ていた。
笑って歩き出した者、ふらふらと歩き出していた者、しっかりとした目つきをしていた者、かなり憤慨しているように見えた者・・・・。
まさか見られているとは思わなかったのか、どの選手もかなり行動に差があることに城島は目をつけた。
これも自分の『捕手』としての癖か?と自嘲気味ながらも、しないよりはマシと割り切って考えた城島は、
見ることの出来た18人の選手の行動を分析してある一定の法則に従って名簿に印を付けていった。
『危険』『あまり接近しない方がいい』『非戦闘的』をそれぞれ『星印』、『黒丸』、『白丸』に変えて。


記入が終わり、一息ついていると城島は自分のとはまた別の鞄があることに気が付いた。
先ほどの出来事を思い出し、アイツ馬鹿じゃねぇ、と呟きながら鞄の持ち手に手を伸ばし引き寄せる。
中を探ると和田が持っていった支給品の拳銃以外は全て残っているようだった。
ラッキー、と小さな声で呟きながら、城島は和田の鞄の中に入っていた食料や水を自分の鞄に移していった。

鞄の中身を移す作業をしていると、和田の鞄の中に一つ見慣れない小さな箱があった。
取り出して開けてみると、白い紙が入っておりその下には補充用の銃弾がずらりと並んでいる。
箱の側面に書かれている数字通りなら50発分入っているらしい。
城島は箱に入っていた紙を見た。


『ミネベアM60(通称:ニューナンブ)
 何とあの警察でも使われている拳銃です!扱いやすくて初心者でもバンバン人殺し出来る当たり武器☆★』

裏返すとどうやらそのニューナンブの使い方や詳細について書いてあるようだ。
いいなーくじ運あって、と溜息を一つ漏らす。
銃弾だけあっても意味ねぇし・・・・・と思いつつ城島は箱の蓋を閉じ、鞄とは反対側に置いた。

鞄の中身を移しきると先ほどの紙の裏に書かれた説明を読み始めた。
そこには撃つ時は撃鉄を下げてから引き金を引くだけでいい事と
、銃弾を補充する際はロックを外して左側にシリンダーを出す事が簡単に書いてあった。
そしてその下にはニューナンブの全長や重さ、口径などがこれまた簡単に書いてある。
城島は詳細の部分にあった総弾数を見てある事に気付いた。

総弾数5発?
思わず目を見開く城島。
じゃあアイツ撃てるの4発って事かよ。
さっき誰かに当たったから1発無駄にして、セットで支給品だった補充用銃弾は今ここにある。
傍らに置いた箱を見ながら城島は笑いを堪えられなかった。
マジでバカだなぁアイツ、くじ運よくてもこんなんじゃあっという間に死ぬじゃん。
まぁ早く死んでもらったほうが楽でいいけど、と思いながらペットボトルを取り出し水を一口飲んだ。


さてこれからどうするかな。
城島はペットボトルを持ったまま頬杖を付いて考え始めた。

まだ今はみんな動き回ってるだろうから、行動を始めるなら夜の方がいいだろうな。
あんまり人に会うのも殺すのも面倒だと思うし。
ま、銃とか奪えたら後は隠れとくか。
禁止エリアになればその都度場所変えればいいし、誰かに会ったらとりあえず様子見ればいいだけだしな。
とりあえず夜自由に動けるように寝るか。
この場所は和田以外は知らないだろうし、わざわざ島の奥から開始地点まで戻ってくる奴もいないだろう。
アイツも帰ってくる訳ねぇしな、あんだけ混乱してたら。

さっさとそう決めると城島は鞄にペッドボトルを戻し、それを枕にして寝転がった。
ペットボトルやら何やらがゴツゴツしていて痛いが寝れないことは無い。
小さく欠伸をすると眼を閉じて、頭と鞄の間に組んだ両手を入れた。


人殺しなんて面倒くせぇなぁ。
面倒な事嫌いなんだよ、いい加減分かれよ・・・。
最後にそう考えながら、城島は静かに眠りの海に沈んでいった。


【城島 D−2で睡眠中】




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