78.歪んだ雑草魂 --------------------



えーっと砂浜から階段進んで、道なりにずーっと来たら家があって、そこを通り過ぎたところにあった橋を渡って・・・・。
森の中であぐらをかいて上原は記憶を手繰り寄せていた。
ホルダーの中にあった地図とペンを使い、今まで自分が歩いていた道を辿る。

「橋を渡って・・・・で・・・森やから・・・・」

ペンの先がG−6の真ん中あたりで止まった。
俺が今おるんがここか、と上原は確認してホルダーの中に地図とペンを戻す。
そしてふぅと一息付き、ぼんやりと空を眺めた。

銃声が二発聞こえた、とりあえずやる気になってんのが二人居るって考えても良さそうやな。
それと銃が二丁あることは確実や、できればこれからのためにも銃が・・・
これから?と自分の頭の中で再生された単語に思わず口元が歪む。
これからな、と口に出して呟く。
そしてふと宙から視線を外し、右手を見る。
握られた新品の鎌の刃がきらりときらめいて、上原はぞくぞくするような感覚を体の底から感じた。

怖いんか?俺。殺し合いや言われてこんなとこ放り込まれて・・・。
ざぁっと風に吹かれながら上原は自分に問う。
怖い?怖い訳あれへんし。
もう一度空を見上げると灰色の雲が空を覆っているのが見えた。

怖いんやない、楽しみなんや。
優勝してメジャーに行ける事が。
尚且つ邪魔な由伸を消せる事が。

もう一度風が吹き、前髪を揺らす。
しかし上原はそんな事を気にもとめず鎌を目の高さまで持ち上げた。
普通の鎌と何らかわりのないはずのそれはやけに軽く思え、やけに美しく見えた。

殺す。
武器なんか無くてもええ、この体と俺の頭があればいくらだって誰だって殺せる。
俺が進むべき道で邪魔なもん全て殺す。
信頼とかそんなもんどうでもええねん。
殺して、殺して、殺して、優勝して、メジャーに行く。
そんで俺が全日本、いや世界一の投手になったんねん。
殺して、殺して、殺して、殺して、俺は生き残るんや。
松坂やって、城島やって、もちろん由伸やって、みんな俺が殺したんねん。
俺は生き残る、絶対生き残る。
みんな殺して、生き残ったんねん。
生き残って、んで最後に笑うのは俺や。

上原の瞳が一層暗さを増す。
口元は笑いで歪んだまま、右手は鎌を握ったまま、そして自分の欲望の赴くまま、上原は立ち上がった。

とりあえずどこ行こか。
人が多く集まりそうなところがええな、はよみんな殺してこんなゲーム終わらせたいし。
上原はそう考えながら、右手を後ろに回してベルトとズボンの間に柄が挟まるようにして鎌を入れた。


「殺したんねん」

誰だって、殺して。

「最後に笑うんは俺だけでええわ。雑草魂なめんなや。」

そう呟くと上原はさっき通った集落へ向かって歩き始めた。
歪んだ雑草魂が今目覚める。


【上原G−6からG−4に向かって移動開始】




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