53.ルパンを探せ --------------------



17番目…これは良い順番なのか、悪い順番なのか…由伸はただぼんやりと無気力に鞄を開ける。
まったくの無防備で、まるでどうなっても構わないかと言うように。

【最強のガンマン次元愛用『S&W』〜ハードボイルドな世界〜】

鞄から出てきたのはS&W。渋い書体で記されたラベルを見るなり脱力するように大きなため息をつく。
「これをスコープ代わりにしろってか?」
そして新しくごわついたキャップをさする。
確か次元は帽子をスコープ代わりにしており、帽子が無いと弾が当たらないと聞いたことがあり、さらに苦笑する。
こんなどうでもいいことをこんな状況で思いだし、苦笑する自分。それはまだこの歪んだ闇にピンとこないからであろう。
「無理…だな。俺には無理だ。」
誰かを殺すことでしか生きる事ができない。
万が一生き残ったところで何事も無かったように野球やって…そのうち結婚でもして子供ができて、
引退して…今度はOBとしてゲームを黙認して…
「……」
生き残るということはそういうことなのか…由伸は襲ってきた寒気に身を震わす。

「生き残っても地獄…か。」
生きる気力を失ったようにS&Wをゴトン、と地面に落とす。
「どうしようかね。」
由伸は目を閉じる。
だが、このまま犬死にしたところで…今後この悲惨なゲームが二度と起こらない保証などあるであろうか。

(…生き残り、何事も無かった顔して野球続けて…
 引退後はゲームを知らないフリをする…誰がそう決めたんだ?生き残るという事は…)

由伸は落としたS&Wを拾い上げた。
(二度とこんなゲームが起こらないように…それこそ命賭けて阻止する事が…本当の意味での生き残る、じゃないのか?)

S&Wをじっと眺めながら今一度自分自身に問いかけてみる。
「俺がここで死んで…もし生き残った奴等が今後もゲームを黙認するようなら…
 この先とんでもない数の犠牲者が出てしまうじゃないか…」
それこそ身の毛がよだつ話しである。由伸は固く口唇を噛みしめた。
「生き残ろう…生き残って…」
なんとしてでも今後、二度とゲームが起こらないようにしなくてはいけない。
「死ぬのはそれが終った後でも遅くない…」
そうと決まれば動くのみである。だが、今は一人という極めて寂しい状況であった。
「次元愛用S&Wか…次元にゃルパンが付きものだ。」
既にヤル気になっている選手もいるであろう。
悲しい事であるが、容易に想像できることだ。
そんな中で信頼できる相棒を探す…これは困難な事かもしれないが、絶対不可欠なことでもある。

(こんな状況なんだ。こいつなら…というのは独断と先入観にすぎないだろうな。でも…)
その独断で動くしかないのだ。
「…動く前に…少し考える時間を作るか。」
やみくもに動くことで、信頼できる仲間と出会えるという劇的な可能性よりも、
この選手ならば…とある程度決めて動く事にした由伸は砂浜に選手達の名前を書き連ねる。
アテネで共に過ごした面々の名前を…




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