26.微笑む死神 --------------------
五輪会への招待状はこの男、岩瀬仁紀(D13)にもちゃんと届いていた。皆と同じ白い封筒の招待状。
何の躊躇もなく乱雑に封筒を開ける。その中には招待事項とさらにもう一枚の紙が入っていた。
「…[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が該当となり強制参加になります。
尚、欠席者には重大な罰則が科せられます]…か。つまりは強制参加というわけだな。」
その中に明記されていた文章をわざと音読してみる。
もちろんその文章が意味することは岩瀬にもわからないが彼の直感が途端に働き五輪会への興味を沸き立たせた。
そういえば先程からの何度かの携帯の着信。気にはなったがどうせ福留からのものだろうと思い意図的に無視を続ける。
そんなことよりも五輪会のことだ。
「さて…行く準備をしなければね。」
招待状を手でぐしゃりと握り潰し無造作に投げ捨てる。
いつもの優しそうな笑顔から想像もつかない恐ろしげな微笑を薄らと浮かべ岩瀬は集合場所に向かった。
「なにか楽しいことがありそうだな…。」
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