108.消すべき存在 --------------------



目の前で何かが起こっている。

(俺は、殺ったのか…?)

真っ赤に染まった手は何よりの証。
福留は無意識のうちに村松の血を吸った包丁を手から滑り落とした。

(俺は、殺ったんだ…。)

血を見たショックなのか頭の中が真っ白になる。
そして福留は茫然と立ったまま事態を見届け、しばらくその場に立ち尽くしたままだった。


立ち尽くしたままでどのくらいの時間が経っただろうか、福留は妙に喧しい放送を耳にした。
空白の時間により落ち着きを取り戻したのかその場に腰を下ろし無言で地図に死亡者と禁止エリアをメモしていく。
放送により先程出会った村松の死も確認した。

「くそっ…」
福留はもどかしそうにぎゅっと唇を噛む。
自分は村松との殺し合いに勝った、倒すべき敵を一人減らした。
喜ぶべきことなのだが何かがひっかかっている。
そう、あの時の村松の言葉が忘れられない。
「俺より岩瀬さんがチームに必要とされているだと?」
そんなはずはない、なにより自分はチームのことを誰よりも考えている。
それなのに…。

あの男はこう言った。


「…チームにしてみれば、お前が生き残るより岩瀬が生き残った方が嬉しいだろうな。」

「本当にチームを日本一にさせたければ、ここで死んだ方がいいんじゃないか?」

福留はその事を否定するかのように頭を振る。
怪我などなければ絶対に自分が日本一へと導くことができたのだ。

悔しい、悔しい。

どうすればこの悔しさを消すことができる。
目の前に見える血だらけの包丁を見ながら考える。

そうだ…、これを使って。

「この殺し合いでどちらが必要な存在なのか決めればいいじゃないか。」

強いものこそチームにいるべき、弱者には 死 あるのみ。
福留はそうと決めると岩瀬が逃げていった道を見据え立ち上がる。

「岩瀬さんはどこにいる?」

ついでに殴られたお返しもしてやろう、そう思いながらただ待つだけの狩人はついに行動を始めた。

【福留孝介(1) B−6】




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