103.狩りの鉄則 --------------------



最初に炸裂音。
それから爆風。降り注ぐ小石。もうもうたる砂煙。

それは三浦大輔の度肝を抜くのに充分だった。
今は冷酷な“狙撃者”に変貌を遂げた“ハマの番長”も、あまりのことに銃を取り落として尻餅をつく。

「なっ!?」

立ち込める砂煙の中、呆然と見つめる垣根の向こう。
建物の影へと消えてゆく背中が見えた。
その手前、砂利で舗装された道路にはぽっかり穴が開いて地面がむき出しになっている。

爆弾、か……?

ダイナマイトか手榴弾か。なんにせよ相手が投擲型の爆弾を持っている可能性は高い。
さいわい爆心地は三浦の潜む場所からは距離があったが、直撃を食らっていれば四肢が吹っ飛んでいただろう。
三浦ははじめて自分が狩られる側に回る可能性にぞくりとした。
しばらくして、それ以上の反撃の気配がないことに胸を撫で下ろす。
「ちっ……」
三浦は立ち上がって、袖で顔をぬぐった。いつの間にか、大量の汗をかいていた。
汗に貼りついた砂が顔をこする。砂塵で目が痛い。
顔を洗いたい、と思った。冷たい水で思いっきり顔を洗って、気分を入れ替えたい。

反撃してくるとは、うかつだったな……。

安藤をあっさり仕留めたことで、自分の武器の優位性を信じすぎていたかもしれない。
せっかくの獲物。それも大物ニ匹。どちらかだけでも仕留めたかったのに。
動いてる標的に当てることは想像以上に難しかった。
完全に立ち止まるまで撃つのを待つべきだったかもしれないが、陽が傾くにつれますます薄暗くなった空が彼の心を焦らせた。
暗くなるほど狙撃の精度は落ちるのだから。

けど、焦って仕損じたなら意味がない……。
俺もまだ未熟ってことか。

三浦は、深呼吸をひとつすると、爆発に驚いて放り出してしまった狙撃銃を拾う。
松坂と上原を追おうという気にはならなかった。
まだそう遠くには行っていないはずだが、無理に深追いすることはない。強敵ならなおさらだ。
狩りの鉄則は、弱いものから狙うこと。
三浦は気を取り直して次の獲物を探すことにした。
次はもっと慎重に、相手に隙ができるまでしっかり待とう。
ピッチングと同じだ。焦ってストライクを取りに行けば手痛い反撃に遭うこともある。

二人を逃がしたのは惜しかったが、教訓は次回に生かせばいい。
「粘り強さには自信があるんだからな」
三浦の顔は不敵な笑みを取り戻していた。
狙撃銃のスコープに亀裂が入っていることには、まだ気づいていなかった。


【三浦大輔(17) G−4】




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