07.電話連絡 --------------------



「どうした、相川?」
 17番三浦大輔の携帯にかかってきた電話の声は、バッテリーを組んでいる59番相川亮二のものだった。
『あの、そっちにも、変な手紙来ませんでした?』
「やぶからぼうになんだよ? その変な手紙ってのはどういうことだ?」
 言いながら、三浦はテーブルの上に置かれた白い封筒を手に取る。「あ、もしかしてコレのことか?」
 その封筒は、まだ封も開けずに放り出してあった。
『それ、あけちゃだめですよ!!』
「は? 中味には何書いてあるんだよ?」
『・・・五輪会のおしらせ、っていう手紙が入ってます』
「五輪会って・・・アテネのか」

 三浦は、アテネオリンピックに行ったときのことを思い出した。

 金メダル確実、という周囲の声で必死に野球をやって、ふがいない成績で帰ってきてみたらまさにチームも火の車で。。
 今から考えると、よくあのチーム状態でアテネなんか行ったなと思う。

『そうなんですよ! でも、それが、ですね』
 そこで、三十秒ほど間が空いた。

「・・・おーい?」
『あ、すみません。ちょっと水飲んでました』
 三浦の呼びかけに、相川は悪びれずに言う。『それで、、、ええと、どこまで話しましたっけ』
「五輪会、っていう会のお知らせだ、ってとこまでな」
『ああ、そうでした! それでですね、その内容がちょっと、変なんですよ』
「何が、変なんだ?」
『五輪会のお知らせ、という手紙と、別紙で変な追伸文がついてます』
「変な追伸文ねぇ・・・」
『ええと、『アテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が該当となり強制参加となります。』
って書いてあります』
「なんだ、強制参加じゃないか」
 三浦が呆れて言うと、相川はそれをさえぎるように言った。
『変ですよ? だって、普通五輪会って他のスポーツチームと合同でやるもんでしょ? なんでウチだけ単独なんですか?』
「まあ、そうかもしれんが・・・」
『とにかく! 三浦さんはその封筒は開けちゃだめです! 絶対ですよ??』
 電話は唐突に切れた。
 三浦は携帯をテーブルに放り、自分もソファに体を沈めた。
「・・・なんだそりゃ」
 三浦はひとりごちた。「訳分からん」

 テーブルの上には、携帯と封を開けてない白い封筒が放置されている。




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